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東京地方裁判所 平成9年(ワ)27517号 判決 1999年5月27日

原告

甲山A子

右訴訟代理人弁護士

叶幸夫

水澤恒男

右叶幸夫訴訟復代理人弁護士

鈴木英夫

被告兼亡甲山B美訴訟承継人

乙川C代

丙谷D江

甲山E夫

被告(亡甲山B美訴訟承継人)

甲山F雄

甲山G子

右五名訴訟代理人弁護士

石川正樹

主文

一  原告の主位的請求を棄却する。

二  被告兼亡甲山B美訴訟承継人乙川C代、同丙谷D江及び同甲山E夫は、原告に対し、東京地方裁判所平成八年(ケ)第七五三号不動産競売事件につき平成九年一二月一七日に作成された配当表に基づく配当が実施されたときは、各自金四九二万九四〇一円の支払をせよ。

三  原告のその余の予備的請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

五  この判決は、第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  主位的請求

(一) 東京地方裁判所平成八年(ケ)第七五三号不動産競売事件につき平成九年一二月一七日に作成された配当表の「配当実施額等」の欄のうち、亡甲山B美への配当額一六四七万七五五六円とあるのを一一七〇万二四七二円に、被告兼亡甲山B美訴訟承継人乙川C代への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同丙谷D江への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同甲山E夫への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、原告への配当額一一〇六万六七六八円とあるのを三一五三万一一九八円にそれぞれ変更する。

(二) 訴訟費用は被告らの負担とする。

2  予備的請求

(一) 被告兼亡甲山B美訴訟承継人乙川C代、同丙谷D江及び同甲山E夫は、原告に対し、各自金六四二万三六五三円の支払をせよ。

(二) 訴訟費用は被告兼亡甲山B美訴訟承継人乙川C代、同丙谷D江及び同甲山E夫の負担とする。

(三) 右(一)につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  主位的請求

(一) 主文第一項同旨

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

2  予備的請求

(一) 原告の予備的請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  東京地方裁判所は、別紙物件目録≪省略≫一から三まで記載の各土地及び同目録四及び五記載の各建物(併せて以下「本件不動産」という。)に係る平成八年(ケ)第七五三号不動産競売事件(以下「本件競売事件」という。)につき、配当期日(平成九年一二月一七日)において配当表(以下「本件配当表」という。)を作成し、甲山B美(以下「B美」という。)への配当実施額を一六四七万七五五六円と、被告兼亡B美訴訟承継人乙川C代(以下「被告C代」という。)への配当実施額を一三〇〇万二一四二円と、同丙谷D江(以下「被告D江」という。)への配当実施額を一三〇〇万二一四二円と、同甲山E夫(以下「被告E夫」という。)への配当実施額を一三〇〇万二一四二円と、原告への配当実施額一一〇六万六七六八円と記載した。

2  原告は、右配当期日において、本件配当表につき、本件配当表「配当実施額等」の欄のうち、B美への配当実施額一六四七万七五五六円とあるのを一一七〇万二四七二円に、被告C代への配当実施額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同D江への配当実施額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同E夫への配当実施額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、原告への配当実施額一一〇六万六七六八円とあるのを三一五三万一一九八円にそれぞれ変更すべき旨の異議の申出をした。

3(一)  B美は、平成一一年三月一一日死亡した。

(二)  被告C代、同D江及び同E夫は、いずれもB美の子である。

(三)  被告(亡B美訴訟承継人)甲山F雄及び同甲山G子(以下「G子」という。)は、いずれも、B美の子である甲山H郎(以下「H郎」という。)の子であり、同人は、平成六年四月二七日死亡した。

4(一)  朝日信用金庫(以下「朝日信金」という。)と叶食品有限会社(以下「叶食品」という。)は、信用金庫取引契約を締結した。

(二)  H郎は、朝日信金との間において、右(一)の信用取引契約に基づき叶食品が朝日信金に対して負うべき債務について保証をする旨約した。

(三)  B美、被告C代、同D江、同E夫及びH郎は、別紙物件目録一から三まで記載の各土地及び同目録四記載の建物を共有し(同目録一及び二記載の各土地並びに同目録四記載の建物につき、いずれも持分割合各五分の一、同目録三の土地につき、持分割合B美三分の一、その余の者ら各六分の一)、B美及びH郎は、同目録記載五の建物を共有していたところ(持分割合B美が五分の二、H郎五分の三)、朝日信金に対し、平成三年一〇月一九日本件不動産の上に次の内容の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を設定する旨を約した。

(1) 極度額は、六五〇〇万円とする。

(2) 被担保債権の範囲は、信用金庫取引、手形債権、小切手債権とする。

(3) 債務者は、叶食品とし、根抵当権者は、朝日信金とする。

(四)  朝日信金は、叶食品に対し、平成三年一二月四日、右(一)の契約に基づき、七三五〇万円を次の約定で貸し付けた(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、これに基づく債務を「本件貸金債務」という。)。

(1) 利率は、年八・三パーセントとする(ただし、朝日信金の長期貸出最優遇金利の変更に伴って引き上げ、又は引き下げられるものとする。)。

(2) 弁済回数は、三〇〇回払いとし、元利返済額は、初回八七万五八五〇円、二回目以降は五八万一九六八円、最終回五八万一八五七円とする。

(3) 弁済期は、初回は平成四年一月二〇日とし、二回目以降は毎月二〇日とする。

(4) 叶食品が解散した場合には、同社は、その後に到来すべき期限の利益を当然に喪失し、残額全部について期限が到来したものとみなされる。

(五)  叶食品の社員総会において、平成六年五月一二日叶食品を解散するとの決議がされた。よって、叶食品は、本件貸金債務につき期限の利益を喪失したものである。

(六)  朝日信金と叶食品との間の信用金庫取引、手形取引、小切手取引は、平成六年五月一二日終了した。

(七)  原告は、本件債務に係る保証人であるH郎の死亡の当時その妻であり、同人の権利義務を承継したから、本件貸金債務の弁済につき正当の利益を有する者というべきところ、朝日信金に対し、平成六年七月四日本件貸金債務につき二九四五万五一六三円を弁済した。

(八)  本件不動産についてのB美、被告C代、同D江及び同E夫の各持分の合計価格は、B美のそれを一九五七万六九五六円とすると、被告C代、同D江、同E夫のそれはいずれも一三〇〇万二一四二円となる。以上の合計価格全部の合計金額は、五八五八万三三八二円となる。

(九)(1)  右事実からすると、本件貸金債務に係る保証人及び物上保証人の頭数は、五名(保証人であるH郎並びに物上保証人であるB美、被告C代、同D江及び同E夫)であり、右(七)の代位弁済金に係るH郎の負担部分は、その五分の一に相当する五八九万一〇三二円であり、これを除いた残額は、二三五六万四一三一円となる。

(2) そうすると、原告が朝日信金に代位してB美に請求することができる金額は、本件不動産についてのB美の各持分の合計価格一九五七万六九五六円の前記(八)の合計金額五八五八万三三八二円に対する割合である〇・三三四二を、右(1)の代位弁済金残額二三五六万四一三一円に乗じた金額である七八七万四四八四円となる。したがって、B美に配当されるべき金額は、本件配当表に記載された配当額一九五七万六九五六円から右金額を減じた金額である一一七〇万二四七二円となる一方、右金額は原告の配当額に加算されるべきこととなる。

同様にして、原告が朝日信金に代位して被告C代、同D江及び同E夫にそれぞれ請求することができる各金額は、いずれも、本件不動産についての右三名の各持分の合計価格各一三〇〇万二一四二円の前記(八)の合計金額五八五八万三三八二円に対する割合である〇・二二一九を、右(1)の代位弁済金残額二三五六万四一三一円に乗じた金額である五二二万九八八二円となる。したがって、被告C代、同D江及び同E夫にそれぞれ配当されるべき金額は、いずれも、本件配当表に記載された各配当額一三〇〇万二一四二円から右金額をそれぞれ減じた金額である七七七万二二六〇円となる一方、右各金額は、いずれも原告の配当額に加算されるべきこととなる。

5  仮に、右配当異議に理由がないとしても、そうであるならば、被告C代、同D江及び同E夫は、いずれも、右4(九)(2)のとおり各自の配当額から減ぜられるべき金額である五二二万九八八二円とB美の配当額から減ぜられるべき金額の内金四七七万五〇八四円に各自の法定相続分(四分の一)を乗じた金額である一一九万三七七一円との合計金額である六四二万三六五三円について法律上の原因がないのにこれを利得し、原告は、これらの合計金額に相当する損失を受けたものというべきである。

6  よって、原告は、

(一) 主位的に、被告らに対する関係において、本件配当表の「配当実施額等」の欄のうち、B美への配当額一六四七万七五五六円とあるのを一一七〇万二四七二円に、被告C代への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同D江への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、同E夫への配当額一三〇〇万二一四二円とあるのを七七七万二二六〇円に、原告への配当額一一〇六万六七六八円とあるのを三一五三万一一九八円にそれぞれ変更する旨の判決を求め、

(二) 予備的に、被告C代、同D江及び同E夫に対し、前記5の不当利得金六四二万三六五三円の各自支払を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1から3までの各事実は認める。

2(一)  同4(一)から(三)までの各事実は認める。

(二)  同(四)の事実は知らない。

(三)  同(五)の事実は認める。

(四)  同(六)の事実は知らない。

(五)  同(七)の事実中、原告がH郎の死亡当時その妻であったことは認め、その余は知らない。

(六)  同(八)の事実は認める。

(七)  同(九)の主張は争う。

3  同5の主張は争う。

理由

一  主位的請求について

原告が本件競売事件において配当等を受けるべき債権者に当たるかどうかについてみるに、原告は、本件貸金債務の弁済をするにつき正当な利益を有するものとしてその弁済をしたとし、民法五〇〇条により、朝日信金に代位して本件根抵当権を行使するというのであり、これによって、民事執行法八七条一項四号所定の債権者に当たると主張するものと解される。しかしながら、弁済による代位に基づいて、抵当権で売却により消滅するものを行使する者が、同号にいう抵当権で売却により消滅するものを有する債権者に当たるとされるためには、右抵当権設定登記にあらかじめ代位の附記登記をすることが必要なものと解される。

しかるに、原告が本件根抵当権の設定登記に代位の附記登記をした事実は見出されないから、原告は、右に主張するところによっても、同号所定の配当等を受けるべき債権者に当たるものではないこととなる。すなわち、原告は、本件競売事件において、朝日信金に代位して本件根抵当権を行使することに基づく配当受領権を有するとはいえないのである。

そうであるとすれば、本訴主位的請求は、その余の点についてみるまでもなく失当であることに帰する。

二  予備的請求について

1  請求の原因1から3までの各事実、同4(一)から(三)までの各事実、同(五)の事実、同(七)の事実中原告がH郎の死亡当時その妻であったこと、同(八)の事実、以上は、当事者間に争いがない。

同4(四)の事実は、≪証拠省略≫の叶食品作成部分によってこれを認める。右の争いのない同(五)の事実及び弁論の全趣旨によれば、同(六)の事実を認めるのが相当である。同(七)のうちその余の事実(原告が、平成六年七月四日保証人であるH郎の承継人としての地位において、保証債務に向けた弁済として、二四九五万五一六三円を弁済したこと)は、≪証拠省略≫の朝日信金作成部分(完済証印部分)及び弁論の全趣旨によってこれを認める。

右各事実によれば、本件貸金債務は、本件根抵当権の被担保債務となることが明らかである。

2  ところで、弁済による代位に基づき抵当権を行使する者は、当該抵当権の効力としてその目的物である不動産の売却代金から優先弁済を受ける権利を有するのであるから、他の権利者がこのような優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた場合には、右優先弁済を受ける権利は害されたものというべく、右の他の権利者は、右の抵当権を行使する者の取得すべき財産によって利益を受け、その者に損失を及ぼしたものというべきである。したがって、右の抵当権を行使する者は、右の他の権利者に対し、同人が配当を受けたことによって自己が配当を受けることのできなかった金額に相当する不当利得の返還を請求することができると解される。

3  本件についてこれをみると、右1の各事実によれば、原告は、前認定の弁済による代位に基づき本件根抵当権を行使することができるので、本件不動産の売却代金から優先弁済を受ける権利を本来有することとなる。他方、被告C代、同D江及び同E夫がこのような優先権を有する根拠となる事実は見当たらない。してみると、原告は、本件配当表に基づく配当が実施されたときは、右三名に対し、各自が配当を受けたことによって原告が配当を受けることのできなかった各金額に相当する不当利得の各返還を請求することができることとなる。

被告らは、原告が物上保証人である被告らに対して求償権を行使することはできないのであるから、被告らが配当を受けたことによって原告に損失が生ずるとはいえないとの趣旨の主張をする。被告らが本件貸金債務に係る物上保証人である以上、原告が被告らに対して求償権を有するものでないことは所論のとおりであるが、原告は、弁済による代位に基づき本件根抵当権の効力として本件不動産の売却代金から優先弁済を受ける権利を有するのであり、この権利が害されることによって損失を受けたとされ得るのである。被告らの右主張は、この理を正解しないものであって、当を得ない。

被告らは、いわゆる形式的競売においては、権利者が配当要求をすることはできないとの見解を前提として、本件競売事件は、共有物分割に係る換価のための競売であるから原告が本件根抵当権を行使して配当にあずかる余地はないという趣旨の主張もするが、右の前提において採用の限りではない。

4  進んで、原告が前示弁済による代位に基づき本件根抵当権の効力として本件不動産の売却代金から優先弁済を受け得べき金額についてみる。

(一)  民法五〇一条五号本文にいう保証人及び物上保証人の「頭数」については、次のように解するのが相当である。第一に、保証契約締結又は担保権設定の後、弁済までの間に、共同相続により、保証債務が分割承継され、又は担保権の目的物が共有となった場合には、弁済の時における保証人(分割承継をした共同相続人)又は共有持分権者をそれぞれ一名として頭数を数えるべきものである。第二に、弁済の時において、保証人(分割承継をした共同相続人も同じ)と物上保証人(共有持分権者も同じ)との両資格を兼ね備える者も、一名として頭数を数えるべきである。

これに従うと、前記1の各事実によれば、原告のした前示弁済の時までに本件貸金債務に係る保証人兼物上保証人であったH郎は既に死亡しており、同人の権利義務を共同相続した者は、原告、被告F雄及び同G子である。よって、右弁済の時においては、本件貸金債務に係る保証人は、原告、被告F雄及び同G子であり、本件貸金債務に係る物上保証人(物上の負担を承継した共有持分権者を含む。)は、B美、原告、被告らの七名となるから、前記1認定の請求原因事実によっても、右頭数は、七名であることとなる。これを五名とする原告の主張は採用しない。

(二)  そして、原告の弁済した金額は二九四五万五一六三円であるところ(原告が保証人であるH郎の承継人としての地位において保証債務に向けて右金員を朝日信金に支払ったものであることは、前認定のとおりであるから、そうである以上、原告は右金額の全額について朝日信金に代位して権利を行使することができることとなる。被告らは、民法四八九条四号の適用により原告は弁済金額二八三九万二三六〇円の限度においてのみ代位をすることができるとの趣旨の主張をするが、前示弁済に右規定を適用すべき根拠は存しないから、右主張は失当である。)、保証人である原告、被告F雄及び同G子に対し代位すべき部分(保証人の負担部分)は右金額の七分の三に相当する金額(一二六二万三六四一円)であるから、物上保証人であるB美、被告C代、同D江及び同E夫に対して代位することのできる金額は、民法五〇一条五号ただし書によれば、前者(二九四五万五一六三円)から後者(一二六二万三六四一円)を除いた残額である一六八三万一五二二円について、右四名の財産(共有持分権)の価格の割合に応じた金額であることとなる。

しかして、前記1の各事実によれば、本件不動産についてのB美の各持分の合計価格は、一九五七万六九五六円であり、被告C代、同D江及び同E夫の各持分の合計価格の和(右三名分の和)は、三九〇〇万六四二六円(一三〇〇万二一四二円に三を乗じた金額)であり、両者の合計金額は、五八五八万三三八二円となる。

したがって、B美に対して代位することのできる金額は、右一九五七万六九五六円の右五八五八万三三八二円に対する割合(〇・三三四一七二五一)を、右残額一六八三万一五二二円に乗じた金額である五六二万四六三二円となる。被告C代、同D江及び同E夫に対して代位することのできる金額は、同様にして、いずれも、本件不動産についての右三名の各持分の合計価格各一三〇〇万二一四二円の右五八五八万三三八二円に対する割合(〇・二二一九四二九五〇)を、右残額一六八三万一五二二円に乗じた各金額である各三七三万五六三〇円となる。

5  しかるところ、本件配当表は、その記載によれば、原告がB美、被告C代、同D江及び同E夫との関係において優先弁済を受け得べき右各金額を考慮していないことが明らかであるから、これに基づき配当が実施されると、原告は、B美の承継人との関係において合計五六二万四六三二円の損失を被る一方、同承継人らは、合計同額の利得をすることとなる。同様に、原告は、被告C代、同D江及び同E夫との関係において各三七三万五六三〇円の損失を被る一方、右被告三名は、各同額の利得をすることとなる。

6  そうすると、原告の本訴予備的請求は、被告C代、同D江及び同E夫各自に対し、各三七三万五六三〇円と、B美の承継人との関係において優先弁済を受け得べき金額五六二万四六三二円の内金四七七万五〇八四円に右被告三名の法定相続分(四分の一)を乗じた金額である各一一九万三七七一円との合計金額である各四九二万九四〇一円の不当利得金を本件配当表に基づき配当が実施されたときに支払うことを求める将来の給付請求として理由がある(被告らの抗争態度からすれば、予め請求をする必要も認められる。)が、現在の給付請求としては、未だ原告に損失が発生しているとはいい難いから、理由がないこととなる。

三  結語

以上によれば、原告の本訴主位的請求は理由がないからこれを棄却し、本訴予備的請求は、被告C代、同D江及び同E夫各自に対し、本件配当表に基づき配当が実施されたときに、前示二6の不当利得金各四九二万九四〇一円を支払うことを求める限度においていずれも理由があるからこの限度においてこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文、六五条一項本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 長屋文裕)

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